外国人と見れば バカの一つ覚え みたいに
ボート ボート って五月蝿いボートの客引き
そんな五月蝿い若者に混じって
この親父ボートマンはちょっと違う
静かな物腰で ニターっと笑いながら 近づいて 低い優しい声で
「 It’s a nice weather 」 あくまでも ソフトタッチ
「 I like Long beach best ロングビーチ あそこは 最高でさあ 」
「 船で行くと どこからともなく物売りおばさんが出てきて五月蝿いじゃない 」
「 この赤いボート 私のなんですけどね 息子が座っているのが見えるでしょう 」
「 きょうは 客が付かなくて 手持ち無沙汰なんです 」
「 昨日は白人カップルをどこかに乗せて行ったみたいだね 」
「 ロングビーチまで往復 スノーケリングして 3時間 500ペソでいかがですか 」
「 1人じゃねえ みんなで行ければね 5人で行けば 1人100ペソだよね? 」
「 なんなら プエルトガレラ港に寄って 買物もできますよ 」
こちらの言った事は 聞かなかったことにして
自分が伝えたいことだけを 優しく ゆっくり しゃべる
年季の入った 燻し銀のような おやじボートマン
私の次は ビキニで甲羅干ししている 白人の元お母さんに
ニターッと 近づいて行った