danceintent’s blog

定年後 元気なうちに海外生活

故郷に帰って行った女傑

現在の仕事
 
引き締まった小柄な体 ギョロ目で眼力がある 精悍なビサヤ系の小顔
ランドリーとキャンティーンの会計をはじめ 経営全般を任されている
6時 カルボンマーケットに材料の買出し その足でキャンティーンをオープン
8時 ランドリーをオープン 夜9時過ぎに 両店を閉めて スパへ寝に戻る毎日
休みは日曜日 午後3時にキャンティーンを開けるまでの間だけ
 
スパの他のテラピスト嬢 同様 3食賄い付きの住み込み
責任ある仕事を 休日もなく こなしても 給料は支払われない
衣料品購入や外食も その都度 
オーナーとホワイトゴールドなど中国系百貨店に行き 買ってもらい 一緒に食事
ミンダナオにいる娘が欲しがっていたタブレット代もオーナーは出してくれた

自室がスパ受付の脇にある 夜間休日を問わず 人手が足りない時には
お呼びがかかる まったくくつろげない 住み込みの毎日
 
ランドリーの韓国人客から 預けた衣類が無くなっているとクレームがあった
預かった内訳記録は取ってない 
学校の指定運動着がそんな高額とは思えないが 
強硬に畳み込まれる格好で 2000ペソの弁償をさせられた 
悔しくて泣いた
 
30代のオーナー(中国系独身)は夏に1ヶ月 経営学を学びに渡米するほど裕福だ
渡米中の金庫番を任された時から 「私に万が一のことがあれば、母親に会社の財産のありかを連絡するように」 と言われている
オーナーの母親兄弟姉妹からは 彼の面倒を見てやってくれと 言われるほど 
周りの彼女への信頼は厚い
というより 全て彼女に押し付け 安い費用でこき使っている
 
オーナーと彼女 健康な二人が スパの一つ屋根の下 9年間暮らしている
他のテラピスト達は 二人の親密な様子を見て 女傑に対して一目置いている
普通に考えれば 何もないはずはないが 
彼の本質はゲイ ボーイフレンドもいる  
ランドリーの従業員6人も みんなゲイ 
 
女傑が辞めた場合 オーナーの信頼に足る従業員は育っていない 
利益の出ていないキャンティーンは閉店するしかない 
ランドリーは近所に住むオーナーの妹か オーナー自身が見るのか
どちらも可能性は少ない いずれ店を閉め スパだけの業務縮小となるだろう
 
スパは2pm- 6am営業 業務をテラピスト達にゆだねているかのように
オーナーが店に出ている時間は少ない
マッサージ料金250ペソの内 200ペソは店に 50ペソがテラピストの取り分
取り分20%では テラピストはアホらしくてやってられない
テラピスト達はマイペースに 客からのチップで稼いでいる


 
 
 
女傑の転職
 
1年前 ランドリーの顧客で健康食品・サプリメント販売製造会社のマネージャーから薬の知識がある人材を求めているが 来ないかと誘われた
 
辞めると 今まで世話になったオーナー達に迷惑がかかる 
勤務先もセブ島の地方都市なので その時は 決めかねていた 
が 何もかも押し付けられている今の勤務状態 もう我慢の限界
何でも 人一倍こなすのに 要求もせず言いなりで来たのも 悪かった 
 
今でも他の島での勤務なら 空きがあると マネージャーから返事をもらい 
応募することを 密かに決意した
 
まず父親に話した 
新しい仕事の事は言わずに 現状の仕事振りを話すと 
スパオーナーのやり方に怒り すぐにミンダナオに帰って来いと言う 
水田の経営管理の仕事を 長女の女傑に引き継いでもらいたい
1人では歩行困難になっている母親の話し相手にも なって欲しい
父にしてみれば お父さん子の長女と 一緒に暮らせれば どんなに嬉しいか
女傑だって 子供達と一緒に住みたい
 
セブ市に住む妹に相談すると 
新しく住む場所が決まるまで 自分の家から職場に通えば良いと言ってくれる
共稼ぎでメイドがいる妹夫婦とは 常に連絡を取り合っている 
新しい会社の給料日までの生活費も貸してもらえる
 
面接日初日から採用確実と知った
3日間の研修が面接後から続く 
苦労が顔にモロ出てる(研修時 女性本部長が笑いながらそう言った )
コネもない40代半ばの女性を即決で採用するって どういう会社
女傑のことを誰に聞いても 良い答えが返ってくる 彼女の人柄からか
数字に強い ・ 覚えが早い という能力が認められたからか
 
4階建 新築の会社のボーディングハウスに 面接した日から 即入居可 
食事代はもらうが 部屋代は無料 
3日間の研修後 3ヶ月間の試用期間 給料は要相談
 
スパのオーナーには 体の具合が悪くて 妹宅で休むと連絡してある
給料も満足に払わないくせに 君がいなくなったら生きていけないと言うオーナー
9年間 彼女におんぶにだっこだった オーナーへは どう切り出せば
 
 
「 すみません もう限界です 父親は すぐに帰って来いと言うし
当座必要なお金は父親から送金なり 妹から借りるなりして 
どうにかなります 給料も何も要らないので どうか辞めさせてください 」
 
ここは 下手に出るしかない
またいつか セブで働くようになって 
スパで夜間アルバイトをさせてもらうことも 
あるかも 知れない
 
いますぐ辞めると言うと オーナーがどんな行動に出るか 女傑には全く解らない 
どう切り出したらよいか 妹に相談した オーナーの強い力を考えると とても怖い
 
 
 
 
研修期間中の事故
 
研修二日目が終わり 翌日が最終日という夜 
妹と二人 マックで夕食 オーナーへ何と言おうか 話し合った
話し終わって1階に降りる階段で 女傑は転び 立てなくなった
 
マックの女マネジャーが付き添って 近くの病院の急患受付室に運ばれた
8時に運ばれ 2時間待って診察 レントゲン設備のある 公立病院に移動する
タクシーに乗って 公立病院に行き レントゲンを撮るまで また2時間待たされ
撮影結果が出たのが 夜中の12時半 さらに医師の診断まで5時間待たされた
骨に異常はない おとなしくしていれば治るとの診断が出たのが 朝の5時半
 
最初に急患で運ばれてから 病院を出るまで 9時間かかっている
急患が多過ぎて 病院待合室は飽和状態 その分時間も掛かる という悪循環
 
翌日の研修最終日には行けない旨 会社のマネージャーに電話すると
診断書を貰ってくれば だいじょうぶだから心配しないで との返事
 
足を引きづりながら スパオーナーと4日ぶりに会い 
辞めさせて欲しいと 頼んだ
 
ランドリーもキャンティーンもしなくていいから 
事務職として残ってくれないかと 打診されるが 
ミンダナオに帰るからと 断った 
女傑が応募した会社から問い合わせがあったよと言われ 
転職は考慮中だと 言い逃がれた
 
決意が固いと分かったオーナーは
部屋の私物はいつ取りに来ても良いから 
貸与していた携帯もあげるからと
辞職をOKしてくれた
妹が作成 プリントアウトした退職願書 必要ないと受取らなかった 
但し 退職慰労金等に関しての話は 一切なかった
 
一番の気がかりだった オーナーの承諾 あっけなく取れた
足も心も傷ついている女傑を見て 
今まで裏表なく 仕事をこなして来たこと 
少しは 思いめぐらしてくれたのだろうか
 
 
 
新しい職場の問題点
 
3日間の研修で おかしなことに気が付いた
これだけ自社製品が売れているので このまま行くと これこれの販売額となり
これこれの収入が見込まれると説明を受け 自分でも計算させられたが
自社工場での製造が販売予測に 追いつかないことに気が付いた 
現在品切れ状態が続いている商品がいくつかある 補充予定も立っていない
それに 将来 顧客が買い続けるという 根拠もない
その事を尋ねると 明らかにできない秘密もあると 誤魔化された
フランチャイズ方式の全国的な組織には違いないが マルチ商法ふうでもある
 
案内されたボーディングハウス 
窓もないベッドがあるだけの狭い1室の2人使用
幅の狭いダブルベッドに 2人で重なるようにして寝なくてはならない
フィリピンのボーディングハウスは これが普通だと言うが
寝る場所に限っては 今までの1人専用ベッドより 悪い状況になってしまった
 
隣の部屋の女性が 翌日はオフだったからか 
夜通し大きな声で電話していて まったく眠れなかった
 
どうしよう プライバシーのない毎日に逆戻りではイヤだ
父親の言うように田舎に帰り 父の仕事を手伝うか
はたまた 経営ノウハウを覚えたランドリーを 田舎で始めるか
ランドリーの開業資金を出しても良いと 父親とは一応話は してある
 
まずは マネージャーに ベッドの1人使用が出来ないか 
お伺いすることに  ダメなら 入社取り止め カナー 
遺伝的高血圧症の女傑にとって 
安らかな睡眠は なにより大切なファクターだから
 
翌日 女傑は4人のマネージャーからの研修を 代わる代わる受けた
ベッドの1人使用のことなど 言い出せる状況ではなく
採用されたら あちこちの支店に次々と長期出張してもらうが こなせるか
長期出張中は 二人一部屋のボーディングハウスに住んでもらうとか
最近会社の販売業績が良くなく 給料が遅滞している状況とか
入社するより 自営で商売始めたほうが良いのではないのか とか
最初の研修二日間の魅力的な話とは まるで違う 
辛い話ばかり 投げかけてくる
 
寝不足もあって 午前中の研修途中 トイレで吐いてしまった
女傑から体調不調の訴えを聞いたマネージャー達は
心配して 午後からの研修を取りやめた 
 
セブで 学生時代から今まで勉強してきた薬学の知識を生かし 
マネージャーとなり お金を貯め 仕事もバリバリこなしたいという
今回の転職に抱いていた希望は 打ち砕かれてしまった
健康あっての未来予測
 
 
 
帰 郷
 
研修途中で 田舎に帰ることを決意した 
まずは実家で健康を取り戻し 父の仕事を手伝い それから
自営のランドリーかスパを開店する 田舎ではスパは今はまだない 
9年間セブで1人がんばって来た 経験を活かす自信はある
資金は父親か兄弟に出してもらえるよう 話を進めてみよう
 
帰る日が 祖母の法事と重なった
ミンダナオ北部の実家から最寄りの空港まで 片道4時間かかる
ハイティーンの長女が空港に到着したのは 
母の乗った飛行機が着く 1時間前だった
 
今まで 結構 自由に生きてこられたのは 
いつもまわりの誰かに助けられて来たから
なぜか 困っていると みんな助けてくれる